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持ってる人は持たない。持ってない人は持つ。持たないビジネス、儲けのカラクリ レビュー

2013年4月6日

こんな本を見かけた。
かの流通ジャーナリスト、クラウド全盛のこの世の中、
常日頃「持たない」重要性を感じていたので、買って読んでみた。

本の概要

変化の流れが圧倒的に早くなり、
個人としても、企業としても、資産を持つことがリスクになる時代が来た。
つまりなるべく資産を持たないよう、大きく考え方を変え
スピーディーに変化に対応していかないと生き残れない、
という話。

主張としては、著者含めいろんな人がいろんな所で言ってることなので
目新しさはないが、この観点から
・マイホームを持つとはどういうことか
・工場や設備をもっているとどれだけデメリットがあるか
といった具体的な話になっているので、しっくりくる。

設備を持たない法人の場合、
設備(工場、機械、人員、マンションで言えば空き部屋など)の稼働率、
歩留まりといったものを気にしなくて良い。

また、設備に対する投資であれば、当然損益分岐点というものがあり、
その期間より前に用無しになった場合、当然マイナスになる。

それらにこだわることなく戦略の転換を図れるというのがいかに強いことか。
大手家電製造業がつぎつぎ窮地に立っているなか、なかなか身に染みる。

工場などを持たないなら、本社の場所だってどこでも良い。
ここ数年、ノマドワーカーが話題だが、実は企業自体、
もっと前からノマド化してた、ってことか。

さらに
・資産を持たない生き残り術のキモは営業力
という指摘も覚えておきたいところ。
キーエンスを思い起こさせる。

加えて、作るのは自分じゃなくていい、という考え方は
クリスアンダーソンの「MAKERS」などで言及されていた、
オープンソースハードウェアの動向ともリンクする。
世の中の様々な動向が、
「時代が持たない方向へ向かっている」ことを裏付けていて怖いくらいだ。

じゃ僕らはどうするか

持たない仕組みづくりに増して重要なのが、
持たないメリットを活かした決断ができること。
すなわち、ぱっと新しい方向へ切り替えて進めること。

持ってなければ、ハードルは確かに下がる。
でも一番のハードルは、自分の気持ちだ。

例えば、家を持たずにずっと賃貸で行くとしよう。
(自分はリタイアするまでこのつもりだ)

この場合、持たないことによって、
住む場所に縛られないという大きなメリットがある。

だけど、今日本がやばい、シンガポールがアツいからといって
さっと海外移住出来るかといえば、Noだ。
言葉の問題、仕事の問題いろいろあるけど、
結局一番大きいのは、僕がそこまで思いきれない、という点だ。

じゃあ持たないメリットを活かせるように
仕事ではスキルと実績を積み上げ、
語学などのハードルは下げる努力をして行くしかない。

それができるのが、ハンカチ王子的な文脈で言う「持ってる」人なんだろう。

そう。
身ひとつで勝負できる人、つまり「持ってる」人は、
資産だの物だのを持たなくて良い。
だからどんどん新しいステージへ身軽に進めて、もっと「持ってる」人になる。

僕含めて大多数は、持つべきものを持たず、
持つべきでないものを持っている。

そういうことなんだろう。

まずは、持たないことから真似して行こう。

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