書評 考察・意見

芸は身を助ける。レイヤー化する世界で。

これ、読みました。

SNSが発達した世界では
個人が持てる様々な能力や特性を発揮し
多面的な活動、キャリアを築いていける時代がきている。

これまでのハードル(参入障壁)にとらわれず
フラットな世界にどんどん参加していこう
という話。

ひとつひとつの話は、他で聞いたことのある話とつながるものも多い。
大前研一氏がThe Invisible Continentで述べたプラットフォームの話とか
リンダグラットン教授のワークシフトとか
平野啓一郎氏の分人主義とか。

しかしそれが見事に統合されている。
おかげで単なる未来予測ではなく、今起こりつつある変化が
(プロの時代から、スキルや知識のある個人がネットで台頭する時代への変化)
歴史上の必然として
よく理解できるようになっている。

なにより
「国家という枠組みがひとつの概念でしかない」
と断言してしまったところがこの本の一番大きいところ。

じゃあ国家ってなんだったのか。

結局、一部の秀才にとって都合のいい仕組み、だったのだと気づく。
つまり知識や情報、あるいは財力を持てる者が
都合の良い仕組みを作り上げ、さらに持てる者になるという循環。

だけど、ネットにより世界はフラット化し、
知識や情報を手に入れやすい、という特権はなくなった。
発信したものを皆に届けやすい、という特権もなくなったわけだ。

統治する側にとってこれがいかに厄介なことであるかは
容易に想像できる。

そうすると、特権を利用した統治という仕組みの衰退が見えてくる。
それが国民国家の終わり。

じゃ、これから国家の代わりになにが枠組みとなるのか。

それが本書でいう「レイヤー」であり、
「場」であり、さらに言い方を変えるならプラットフォームである。

その場その場で好きなプラットフォームを選び取り
プラットフォームに合わせたいくつもの顔(特徴)を持つ。
参加するかしないかは自由。

好きなことを好きなように伸ばす。
いくつかに絞ることもない。
そして場に参加し、つながる。
自分の知識やスキル、労力を提供し、場の中に居場所や地位を作っていく。

サラリーマンとか会社員というのだって、部長や課長というのだって、
ひとつのレイヤー(特性)に過ぎない。
だからフリーランスの話と割り切らず、会社員の僕らだって参考にすれば良いんだ。

会社で昇進したいと思う人は減っているけど、
趣味仲間から一目置かれたいとは、皆が思ってるんじゃないだろうか。

会社とプライベートを同列に置いて、どちらでも存在感を高める。
それがこれからのリスクヘッジであり、楽しい生き方でもあるってことなんだろう。

芸は身を助ける。
レイヤー化する世界では特に。

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