この本、読みました。
そんな簡単に年収上がるわけないだろ、というアホっぽい邦題が付いてますが、中身は意外にしっかりしています。
確かにあほっぽいタイトルですが、釣りタイトルってわけでもない。内容を一言で表すと、確かに「収入はどの都市に住むかで大きく左右される」となります。
ほんとかよ。なんか救いのない話だな。引っ越せない人はあきらめろってか。
とか
え、引っ越すだけで良いなんて、そんなお手軽なもんですか。勉強しなくていいの。
なんて短絡的に反応してしまいますが、ここから本書のすごいところ。
まず、データを以て丁寧にそれを示していきます。都会のほうが物価が高い分、賃金も高いよね。とか、そんな単純な話じゃないですよ。
例えば、ある都市の大卒者平均給与よりも、別の都市の高卒者平均給与のほうが上、なんてことがある。学歴よりも住む場所。
そこまで違うのか。似たような規模の都市で、何が違うのか。
簡単に言うと「その都市がツボを押さえてるかどうか」ということらしいです。
具体的には、「世の中全体にイノベーションを起こすようなスター企業がオフィスを置く都市は、その企業と取引するために多くの企業、産業が集まってくるため、都市として発展し、レベルの高い仕事の求人も増え、結果として住人の収入水準が上がる」ということ。
これは面白い。大都会ならなんでもいいってもんじゃない。20年前、似たような規模の大都会であったのに、今では没落している都市と、繁栄している都市。その運命を分けたのはなんだったのか。
それを意図的に作りだし、繫栄する都市になるには、どのようなディールが必要なのか。
そういった話が書いてあります。
何年も前に、「フラット化する世界」という本がありました。インターネットの普及により、誰もが気軽に情報にアクセスできる。社会的階層も飛び越えやすくなった。って本。
ところが。
実際は、地域による格差は大きくなっていたんですね。
大学の例で考えても、わかりやすい。
ある分野のスター研究者がいる大学には、さらにどんどん、その分野の優秀な研究者が集まる。その大学はさらに、その分野の研究で有名になる。研究環境もさらによくなる。どんどん良い循環が回る。ほかの大学と差が広がる。
ネットでいくら論文を読めたって物足りない。やっぱりスター研究者の近くがいいわけです。リアルなコミニティもできやすいし。
そりゃ、差も広がります。なんで皆、東京に出て行くんだよ、とか思ってましたが、やっと納得です。
最後に、この本の内容を端的に表した部分の引用を。
私の研究によれば、都市にハイテク関連の雇用が一つ創出されると、最終的にその都市の非ハイテク部門で五つの雇用が生まれる。雇用の乗数効果はほとんどの産業で見られるが、それが最も際立っているのがイノベーション産業だ。その効果は製造業の三倍にも達する。(中略)ある自治体が技能の乏しい人たちのために雇用を創出したければ、皮肉なことに、高い技能の持ち主を雇うハイテク企業を誘致するのが最善の方法だということになるのだ。
イノベーション産業に関わる限り、どこに居るかは重要なんだ、というお話でした。