アート思考という言葉を、最近、たまに聞きます。
なんだそりゃ。
デザイン思考がやっとメジャーになってきたと思ったのに、もう次?
まあ、とりあえず読んでみましたよ。アート思考と言えばまずこの本。アート思考どうこうというのを抜きにしても、控えめに言ってめちゃくちゃ良かったです。
アート思考とは何なのか(私見)
アート思考とは、簡単に言うと、「まだ見えていない問題、誰も問題と気づいていないことに取り組む思考」という感じです。いままでのマーケティング思考と比べてみると、
- ロジカル思考(デザイン思考以前)
より多くの人が抱えている問題を解決する。市場調査により、この問題を解決したらどれだけの人が喜ぶか、ビジネスになるか。を判断する。 - デザイン思考
問題を抱えたごく少数の人に対し、とにかく深く迫る。インタビューを重ね、試作品を見せ、何を問題としているのか、それはどうやったら解決できるのか。言葉に落とし込むのではなく、手探りで内面に迫ることで問題解決していく。 - アート思考
誰も問題だと気づいていないことに取り組む。問題だと認識されていないので、もちろん解決方法も、それに取り組もうという人もいない。そういうものに取り組む思考。ある意味、”自分で問題を見つける”思考。
そう、現代は、問題を解くより、問題を見つけるほうがずっと難しい。だから今アート思考。ということなのです。ミュージシャンにとって、過去の誰にも似ていない音楽を産み出すのが年々難しくなっている、みたいなもんですかね。
どう役立つのか
逆説的ですけど、役立つかどうかは、気にしない。それがアート思考。だからこそ、誰も見たことのない地点にたどり着く。そりゃそうだ。役立つと分かってるなら、誰かやるはずですからね。役立つかどうかすら、わからない。というか、そんなこと、考えてみたこともなかった!みたいなことに取り組むのがアート思考。ただ、やってみたいからやる。そんなやつは、自分だけかもしれない。いや、自分だけである可能性が高いでしょう。
だから、結果が出ずに終わる取り組みも、たぶん多い。だけど、ひとたび結果が出ると、それは誰も思いつかなかったような結果が出せる。
スティーブジョブズの言葉が、よく表していますね。
みんな、形にして見せると初めて、自分が何が欲しいのかを知るんだ
そういうことなんですよ。ナンバーワンよりオンリーワン、なんて使い古された言葉だけど、その答えがここにあったんですね。みんなが問題だと思ってることに取り組む以上、オンリーワンになんてなれないわけです。
どうやったらできるのか
では、どうやったらアート思考を実践できるのでしょうか。アート思考って、芸術家だけのものじゃなく、あなたにもできるものなのです。だけど、「アート思考」という、なんだかわからない言葉に閉じ込めてしまっていては、実践のしようがない。アートだけでもわかんないのに、思考って単語までついちゃっては、ねぇ。
というわけで私なりに、「アート思考を、誰でも実践できそうな言葉に変換する」答を考えました。その答とは。
『頼まれてもいないことをする』
です。
もともとは、「ナガオカケンメイの考え」という本で読んだ言葉なんですけどね。これがぴったりだと思います。「子供が、頼まれてないお手伝いをする」みたいな意味ではないですよ。「誰も問題だと思っていない、けど、取り組んでみたら面白そうだなあと自分が思うことをする」ということです。
やってみると、楽しいんですよね、頼まれてもいないことをするのって。例えば新しいイベントなんかは、ほとんどそうじゃないでしょうか。西川氏が始めたイナズマロックフェスとかね。
あそこまで大規模なものじゃないにせよ、頼まれてもいないことをするのって、楽しいです。
おまけ
まあ、簡単に紹介しちゃうとそんな本なのですが、見くびってはいけません。この本、「ほぉ・・・。」と思うことにあふれています。もうね、マーカーひきまくり。アートシンキングに興味ない人にもおすすめです。
例えば…
・個人の収入もPPM(プロダクトポートフォリオ)で考えてみる
・批判だけでなく賞賛を避けることも自分の感性を信頼するために必要
・便利なものほど安く、不便なものほど高くなっている
・ビジネスがアートから学ぶべきことは、自分が当事者であると気づくこと
などなど。まえがきや、ときおり挟まれる事例も示唆に富みまくっています。
この本、おすすめです。
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