たった一年でここまで。
それがこの本を読んだ第一印象です。「アフターデジタル」を読んでとても衝撃を受けたのがつい昨年。なのにもう第二弾?
あー、本が売れると無理やり続編をせがまれるやつかな、それだったらアレだな…と思ってしばらく様子見していたのですが、皆様絶賛。やっと買って読んでみました。そしたら、とんでもなかった。中味はしっかり濃い。たった一年で、これほどの続編が出せるなんて。中国の様々なサービスのアップデートもすごいし、そこへUX(顧客体験)という軸を通して説明する藤井さんもすごい。UXを軸に説明されるおかげで「僕らはどっちへ向かうべきか?」が僕にもわかる。
DXとは何なのか
DX(デジタルトランスフォーメーション)って、何でしょうか?流行り言葉を超えて、最近は一般的になってきた感じのする言葉です。だけどまだ、自分の言葉で説明できる人は多くない。私も以前こんな記事を書いたわけで…
今でもこの考え方は合ってると思いますが、DXという言葉が一般的になってきて、この説明じゃ足りなくなって来ています。「で、DXって私にとって何なの?私の生活にとって、私の仕事にとって何なのよ?」という問いに対する答が、必要とされている。
そこをズバリ『DXとは、新しいUXの提供』と言い切っているのがこの本。とは言えXばっかりで、なんのこっちゃ分からないですよね。横文字を使わずにざっくり説明するならば『良いデジタル化、ダメなデジタル化は、お客さんが喜ぶかどうかで決まる』という意味かな。だいたい。
DX先進国 中国はどうなっているか
では中国では、どんなふうに「良いデジタル化」が進んでいるのか。詳しくは本を読んでもらうとして…一言で言えばもはや「あなただけにぴったりのおすすめ」なんて古いってことです。そうじゃなくて、「今のあなたの状況にぴったり」なものがおすすめされるようになってる。
どういうことか。
例えば僕が、大阪梅田でグルメアプリを開くとします。今までのグルメアプリなら、ラーメン屋とカレー屋を薦めて来る。ま、ひとりランチで迷うといつも、そのどちらかなので。それがいままでのサービス。
で、正しいDXが進むと、これが
・正午までまだ少しありますよ。ちょうど東梅田にいるんだし、あなたの大好きなうどん屋、行列が出来る前に入るチャンス!
・この時刻に西梅田にいるなら、XXというカレー屋でしょ。最近行ってないみたいだし、久しぶりにどう?
・あなたが名古屋にいたとき好きだったラーメン屋、最近梅田に出来たんですよ。行ってみたら?
とか出てくるようになるわけです。いいよねぇ。
僕なんか、「しょーがない、ここでいいか」とテキトーな店でランチ食べてから、「あ!あの店行けばよかった!」って思い出すことがしょっちゅうありますから。こんなふうになったら、生活がさらに充実しますね。”お客様が喜ぶデジタル化”になってるわけです。
DXが加速するとどうなるか
前作アフターデジタル(1)の段階でも、ある程度”お客様の状況に合わせたお勧め”が始まっていたわけですが、それがさらに進んでいる。お客様の状況に合わせるってことは、”いつも”あなたと一緒にいるってことです。グルメアプリで言えば、ご飯食べたい時だけ開くものから、おなかが空いてなくても開いてもらう、を目指し始めている。ちょっとわかりにくいかな。電子マネーのアプリに、例えを変えてみましょうか。
電子マネーアプリは、レジの前で開くでしょ、普通。でも、最近はPayPayでもメルペイでも、もちろんLINEPAYでも、クーポンがありますよね。そうするとどうなるか。そう、”店に行く前から開く”ようになるわけです。さらに、最近はPayPayピックアップとか言って、飲食店のテイクアウト事前注文までできるようになってる。そうです。生活の中で、支払いじゃなくても電子マネーアプリを立ち上げる場面が増えてきているのです。こーゆうのをスーパーアプリ化というらしいですが、生活全般、なんでもこれでできる、という方向へ行きつつある。
それだけ聴くと「なんだかイヤだなー」って感じるわけですが、実はそうとも限らない。中国の自動車メーカーにNIOというところがあるそうです。そこのサービス(NIO Service)について、ちょっと引用しますね。
今日は雨が降りそうだから1日家にいようと思ったタイミングで、NIOのスタッフに(クルマの)メンテナンスをお願いすると、スタッフが家まで来てくれて、車のカギを渡すとメンテナンスをした状態で家に戻してくれます。1日子供と遊んでいられるので、生活の質が上がりました。
そう、この事例のように、DXが進むと生活の質が上がる、それがDXの本当のゴールなのではないでしょうか。良い世の中になりそうじゃないですか?
この本はもちろんそれだけじゃなく、「どうしたら良いDXを進められるか」まで言及してくれています。よいDXを実現するためには、結局お客様の行動をよ~く観察することなんですね。それをサービスの設計に活かすことで、よりよいサービスになっていく。そういう話がもっと詳しく書かれています。おすすめ。