得意なことを伸ばすのか、新たに得意なことを作るのか。作れるとは限らないけれど。
ビジネスマンとして永遠のテーマですね。
それを会社単位でどうしていくか、という本を読みました。
この本を読むことで何を得たかったか
もともとは、書籍「コーポレート・トランスフォーメーション」を読んだのがきっかけでした。そこで激推しされていたのがこの本。全く知らなかったものの、「新規事業の探索と、既存事業の深化、どちらを重視するべきか?」というモヤモヤに答えをくれそうだったので、読んでみました。
でも、タイトルからある程度結論は推測できる。答えは「両方やれ!」なのです。それを「両利き」と表現しているんですね。そこまではAmazonなどの概要紹介でもわかるし。それでも読んだのは、「どうやって両立させるのよ?!」ってことを知りたかったから。
どういう本か
1文で要約すると、「両利きの経営を実現するには、リーダーシップが肝心」という話です。身も蓋もない。
まあしかし、身も蓋もない話で終わっては本にならないので、もう少し細かく分けて説明されています。リーダーはこういうことをしなきゃならない。
- 戦略的意図を明確にする
なぜわが社は両利き(二兎を追う)をせねばならないか?やらないよりやったほうが良いよね、じゃなくて、自社の置かれた立場から導き出す。 - 経営陣の関与・支援
探索部隊は全く違う文化とKPIを持たなきゃならない。幹部をきちんと巻き込み、既存勢力に負けずにそれを守り抜けるか。 - 組織構造
既存部隊(深化チーム)のリソースを使えてこそ、探索に強みが出るが、求められるものは全く違うから、同じ評価ではいけない。組織を分けつつ、リソースは共有するような組織設計、維持ができるか。 - 共通のアイデンティティ
深化と探索は別チームとして独立するのが良いけれど、対立・敵視しがち。会社として共通のアイデンティティを持たせることで、お互いをリスペクトし、相乗効果を導く。
どうですか。こうやって抽象的に書くだけでも、かなり、かなり難しそうですね。ただ、成功事例とともに載っているので、できないことじゃない、とも思える。しかしこりゃ、並大抵のことじゃないぞ。
ちょっと気が楽になる
もちろん、成功事例だけじゃなく、失敗事例も同じぐらい載っています。そうすると、ちょっと変だけど、気が楽になるわけです。むちゃくちゃ優秀なリーダーでも、両利きの経営には失敗してるから。「あぁ、こんな優秀な人でも失敗するんだから、僕なんかができなくても当然だな」って、楽になる。これは思わぬ効用でした。あなたがダメだから、両利きが上手く行かない、じゃないんです。優秀な人でもほぼ綱渡りみたいな、ほっそーい道を通って初めて上手く行く。
普通にやってたら、既存事業が上手くいくほど罠にかかりやすいわけです。そりゃ普通、収益が上がってる方に集中するよね。ゆでガエルなんて揶揄されるけど、やっぱりゆで上がるまで気づかないわけですよ。よほど優秀な人でも。
とはいえ、とんでもない山の高さを知る
しかし、もう一段優秀な人は、そこで探索へジャンプができるわけです。ある意味、非合理な判断とも言える。だって既存事業は、今うまく行ってるんだもの。
そこを、将来を見据えてジャンプできるか。しかも、今まで(既存事業)とは全く違うやり方で。重視するものも違うし、当然KPIも違う。既存事業組からは白い目で見られる。それでも、幹部からの支援を取り付けつつ、やりきれるか。
登るべき山はとんでもなく高い。
それでも、やり切っている人はいるわけです。やり切った人が、どうやってやり切ったかを読めるのも、この本の良いところ。
例えば、もとから実績を上げているめちゃくちゃ優秀な人が、ある時気づくわけです。「自分のリーダーシップスタイルが、新規事業を探索するこの部署、ミッションに合っていない」と。そしてコーチングを受け、自分のリーダーシップスタイルを変えてまで、新規事業の探索を成功させる。
そういうの、グッと来ます。そこまでするか。両利きとは、そこまでしてやっとできることなのか。僕自身の覚悟がいかに甘かったかを知ると共に、そこまでやればいいのか、とわかる嬉しさもある。とんでもなく高いとはいえ、山の頂上は見えた。
こりゃ、やらねばならんな。
そんなわけで、いまいる組織もさまざまな問題が絡み合っているので、さっそくフィールドワークとしてあちこちの現場に出向いて、現状把握をしているところです。
おすすめです、「両利きの経営」。
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