TVを長く見る子ほど、成績は悪いのか?
まあ普通、そうだと思いますよね。しかしこの本に紹介されているアメリカの調査結果では、「TVを長く見る子のほうが、成績が良い」という結果が出たそうです。
僕らは信じられないものしか疑わない
冒頭の話、「そんな馬鹿な?!」と思うでしょ。だけど事実なのです。そう言われたら次は皆さん、自分の感覚と違う根拠を探し始める。アメリカだからだろ?とか、TVって言ってもEテレみたいなのばかり見せたんだろう、とか。
そうなんですよ、それでいいのです。都合のいいデータを集めただけかもしれないし、TVや成績とは別の要素が影響しているかもしれない。そう疑うべきです。
なのに。
同じように意外でも「そんな馬鹿な」と感じないものは、根拠探しをしない。「へぇ~、知らなかった!」なんて鵜呑みにする。そしてなによりこの世の中は正しくないのにそれっぽい情報にあふれている。思い当たりますよね。
ならば「正しくないのにそれっぽい」にダマされないためにはどうしたら良いか。どういう武器を持てばいいか。それがこの本です。
騙されないためにレベルアップしよう
レベル1:因果関係と相関関係
これは、聞いたことある人も多いでしょう。因果関係と相関関係を混同しない。確かに2つのデータはシンクロしてるけど、関連性はないのでは?というやつです。この本で挙げられてる例がなかなか不思議。「ニコラス・ケイジがたくさん映画に出た年は、プールで溺死する人が増える」だそうです、ほんとに。データは見事にシンクロしてる。でも、皆さん「そんなもん偶然だろ?」って思いますよね。
これぐらい突飛な相関なら皆、偶然だと疑える。でももう少しそれっぽいと、信じてしまう。血液型が○型の人はこうだ、とか、年収がいくら以上の人はどうだとか。
「その2つのデータ、本当に関連ある?」
この問いこそが、レベル1のウソ発見器です。意外に、この問いを忘れがちなんですよね。
レベル2:正しいデータ比較方法を知る
「本当に関連ある?」と疑えたなら、次は「関連あるか確かめる」です。この本では、超基本の「ランダム化比較試験」を始めとして、さまざまな因果推論の手法が分かりやすく紹介されています。因果推論とは、つまり本当に関係あるか?をまあまあ高い確率で推測する方法のこと。言い換えるなら、ものすごく様々な要素が影響するこの世の中で、関係ない要素を取り除いて、比べたい要素だけを比べる方法です。
で、因果推論の様々な方法を知ると何が良いのか?
ダマされる手法や、ダマす気がなくても間違った関連付けに気づけるようになるわけです。「あれ、その分析はちょっとおかしいのでは?」という具合にね。それこそウソ発見器を手に入れるみたいなものです。その為だけに読んでも十分もとが取れます、この本。
自分で使いこなせればさらに良い
ウソを見抜くだけでもいいけど、見抜いた上にさらに「本当に関係あるのはこのデータです」って出せたら、カッコいいですよね。それでこそ自分の仕事に活かせるし。
この本は因果推論の手法まで詳しく書いてあるわけじゃないので、あくまでも入口ですが、自分でやってみようと思った方は、オンラインでいくらでも学べますよ。総務省統計局の方が解説してる統計学なんか、おすすめです。もちろん無料。やってみてはいかがでしょうか。Youtubeでも良いし、gaccoとかの無料オンライン講座サービスもあり。講座が開かれてる期間しか学べないけれども。
なんにしてもまずはこの本、おすすめです。ちょっと難しそうだなあ、と思った方には、もっと気軽に読めて面白いこちらの本もおすすめ。