書評 考察・意見

いままで読んだ本を、キレイにつなげて世の中を見通す。ケヴィンケリー「5000日後の世界」レビュー

2021年12月12日


お前は、今まで読んだ本の数を覚えているのか?

とは、とあるマンガの有名なセリフのパロディですが…本、読んでますか。

僕はまあ、ぼちぼちなわけですが、それでも何十年も生きてると、それなりの数になって来るわけです。それらが僕の血肉になっているな、とは感じるのですが、あくまでなんとなくの感覚、でもあります。

それでもたまに、以前読んだ本といま読んでる本がつながって、線で見える時がある。そうすると、本単体より数倍面白くなるんですよね。

そして今回友人に勧められて読んだ本は特に、つながりまくりでした。これまで読んだ本といろいろ・あちこちにつながって、とても面白かったです。こういう本も珍しいな。

どういう本か

WIREDの初代編集長として、あるいは思想家として名をはせるケヴィン・ケリー。テクノロジーという観点から世の中を見通し、しかもそれが当たる。これは「これからの世の中どうなるか?」というケヴィンへのインタビューをまとめたものです。

…というのが一般的な紹介だし、実際さらっと読んでしまうとそうなる。

読んだ結果、得たものは

で、未来予測本だと捉えると、なんだか散漫な内容だなあとか思っちゃうわけです。書いてあることは確かに素晴らしいけど、結局、一冊の本として総合的なメッセージは何だったんだ?という感じ。

これでは書評も書きにくいなあ。とあれこれ考えて、やっとわかりました。これ本当は、「ケヴィンはどういう考え方を以て、世の中を見通しているか」という本なんです。未来を教えてもらうのではなく、未来を見通す方法を教えてもらう。魚をもらうんじゃなくて、魚の釣り方を教えてもらう、みたいなことですね。

例えばコロナ後の世界については、こう考える。AIについては、こう考える。そんな話をいろいろと聞いているうちに、考え方が何となく分かってくる。なんとなく、でも立体的にケヴィンの考え方をつかめることが、この本の最大の効果。

まだちょっと真似はできないけど、少しだけ世の中を見る目が変わる気がする。

いままで持っていた点をつなぐだけで、見えるものがある

さらに読んでいると、今まで読んだ本がけっこう思い出されるんです。ああ、あの本に書いてあったのはこういうことだったのか。と気づくことが多い。

今まで読んだ本は、もちろんそれぞれ役立っている。でもこのケヴィンの本を読むことによって、それらがつながり、新しく分かることがある。ばらばらに持っていたジグソーパズルのピースが、パチパチとはまっていくような感覚があります。

覚えておきたい点の箇条書き

以上、全体としてはものすごく抽象的な説明になってしまいますが、それじゃあ読む気になりにくいと思います。個別に書いてあることも素晴らしいので、少し箇条書きにしておきますね。私の個人的解釈も含みます。

  • 何を学ぶかではなく、「学び方を学ぶ」ことが大事
  • テクノロジーの進化は止められない(コントロールできない)。ならば使い方をコントロールする。どんなテクノロジーにも、良い使い方と悪い使い方がある。悪い使い方とは、「人の可能性を狭める」使い方のこと。
  • これまでになかった種類の組織ができないか。できるとしたらどんなものになるか。(今までにない働き方の形態、仕事へのコミット)
  • 成功とは何かを知るには、何か上手くいかないものに挑戦せねばならない
  • 生活水準は世界レベルで上がっている。すると人々のアイデンティティの多様化が起きる。(生きるのに精いっぱい、からなぜ生きるのか?へ)

そんな感じです。抽象的にも、具体的にも、おすすめ。

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