書評 考察・意見

地政学って何なん?どうやら学問というより、世界を見る方法らしい。「13歳からの地政学」レビュー

2022年10月29日


地政学って、最近ニュースでよく聞きますけど、なんなんでしょうね。調べてみても「これ!」という定義がなくて、なんかぼんやりしてるんだよなあ。

と思っていたのですが、この本を読んだら、なんとなく答えがわかりました。

どういう本か

この本、タイトル通り、中学生あるいは小学校高学年ぐらいから読めるような物語、対話仕立てになっています。ごく簡単に言えば、アンティークショップの店主が、中学生ふたりに、アメリカやロシア、ヨーロッパの歴史を教えるという内容。
しかし単なる歴史ではないのです。地球上でその国がある場所、海との関係、国内に抱える民族の種類、隣国との国境のせめぎあい、石油など天然資源、その他数多くの要素を交えながら、「この国で育ったとしたら、こんな考え方や行動をするのも一理ある。こういう歴史をたどっているのにも、それなりの根拠がある。」という話が語られます。

地政学 という言葉は聞いたことがあっても、結局それが何なのかはよくわからないですよね。実際、「地政学」とは何か、という明確な定義はないらしいし。でもこの本を読むと、なんとなくわかります。結局、地政学って「学」と付いてはいるけど、数学とかの学問とは根本的に違う。

あの国が、あんな行動を取るのはなぜなのか。それを考える時に、その国がどこにあるか・周りはどんな国か・海はあるか、などなど、地域や気候を考慮した上で、見ていかなきゃいけないよね、というのが地政学らしい。

あの国のリーダーはとんでもなく悪いやつだから、とか、そんな簡単な話じゃないよってことです。

何を得たか

難しい本ではないけれど、得られるものはとても大きいです。地政学はもちろんのこと、特に私のような、社会科目が嫌いだった人にお勧めしたい。
結局、この本で得られるのは知識ではなく、「ものの見方」なんですよ。これはめちゃくちゃ大きい。その国の歴史とか、いま起きていることの背景などは、最近YouTubeでもわかりやすく解説してくれるものが多いです。でもね、「なぜ、そういうことを知ったほうが良いのか」「知らなきゃいけないか」ということまでは、教えてくれませんよね。そういう、深く長い話はやっぱり本の得意分野なわけです。

この本でもいろいろと知識は得られますが、それよりも「あぁ、こりゃ地政学をみんながもっと身に付けなきゃいけないな」と実感するんです。

それは一言で言えば、他人(他国・他民族)の立場を理解する ってことです。人類が宇宙で暮らせるようになるのはまだ先だろうし、だったら結局、みんな狭い地球で仲良くやっていくしかないわけですよ。みんなで仲良くやっていこうと思ったら、お互いを理解するしかないわけで、そのはじめの一歩が地政学というわけです。日本にも外国出身の方は増えてるし、こりゃもう少し知らなきゃなって思うでしょ。

グローバル視点とは、地球規模で考える事じゃない

それで分かったんですよね。グローバル視点とかよく言われるし、それは地球規模で物を考える事だと思ってたけど、全然違うんだなと。グローバル視点ってのは結局、「他人(他国・他民族)の立場でもものを考えられる」ってことだったんです。私の勝手な解釈ですけど。

一段高い目線で、ってことじゃない。同じ高さで良いから、他者の目線でってこと。

例えば日ごろ、混んだ電車の中で足を踏まれるとするでしょ。腹立ちますよね。特に相手が何も謝らないとかだと。だけど、そこで考えてみる。「相手にも相手なりの事情があるかもしれない」と。今日はマスクを忘れたから声を出せない、と思ってるのかもしれないし、足を怪我していて感覚が鈍感になっているのかもしれない。そう思うだけで、腹が立つのもすっと収まるわけです。こっちが絶対に正しいとは限らない、って見直す感じですかね。

地政学を学ぶと、それが世界規模で出来るようになるってことです。

他国目線で考えられると何が良いのか

他国目線・相手目線から考えて理解できるようになると、何が良いのか。
自分がされてイヤなことを、やめてもらうアプローチが分かるってことです。なぜ相手がそんなことをするのか。それに対して、「やめろよ!」って言うだけでは、ケンカにしかならない。相手には相手なりの根拠があるし。ところがその根拠を突き止めれば、交渉で解決する可能性がグッと上がる。

地政学、せまい地球で仲良くやっていくには、必須科目になるのではないでしょうか。この本、おすすめです。

-書評, 考察・意見