書評 考察・意見

日本人が無宗教と思うのは、ベースに神道があるからでは。「神道はなぜ教えがないのか」レビュー

神社、行きますか?行きますよね、初詣とか。
では、神道って、どういう宗教なのか、説明できます?

私はできないです。そう、あまりに身近すぎて意識したことなかったのですが、神道って、かなり変わった宗教なんです。この本を読んで、初めて気が付きました。

言われてみれば不思議なことばかり

変わった宗教でも、別になんの問題もありません。でも、「あれ、考えてみたら不思議だよね」って感じる方には、すごく面白い本です、これ。だって、教典とか教えがないんですよ。それで何千年も続いている。これすごくないですか。はっきりと書いたものがないのに、大きく反れることもなく、形を保っているなんて。そんな例、他に思い付きます?ある意味、宗教というより風習に近いですね。

そんなわけで、この本は、神道がいかに特殊かという解説が中心です。それだけなんですけど、面白いんですよね。

神道には、お経のような経典もないし、ご本尊とかの偶像もない。かと思えば、八百万の神とか言って、自然の万物に神がいるような考え方もするし、神話の中にだけ出てくる神様をまつる神社も、菅原道真のような実在人物を神としてまつる神社もある。

なんか自由すぎないか。

そんな解説を読むうちに、「あ~、そういえば、なんでだろ?」と、けっこう引き込まれて行きます。

中でも面白かったのは、「神道には救いがない」という話。言われてみりゃそうだ。仏教なんかで言うと、「世の中の苦しみから脱するにはどうしたら良いか」というのがテーマなわけですよね。「南無阿弥陀仏」って唱えれば良いんだよ、とか、「ぎゃーてぃぎゃーてぃ」とかですね。そしたら救われる。心の安寧が得られる。

ところが神道には、そういうの一切ない。神様は拝むけど、拝むだけ。
お願い事はするけれど、なんか「救いを求めて」ではない感じ、しませんか。なんとなく。
考えてみたら、当然なのです。だって「こうしたら救われるよ」というのが一般的宗教の教えであるところ、その「こうしたら」がない神道。だから、「救われるよ」もない神道。

これは単に面白く読めばいい本

結局この本は、それだけっちゃあそれだけの本です。「言われるまで気づかなかった」「へぇ~」という面白さを楽しむ本。

で、ここからは私が勝手に思いついたことですが。
罰についても、神道って他とは違う。バチがあたる、という考え方はあるけど、それは「教えに反したから」じゃない。悪いことしたからバチがあたる、という感じですよね。これが他の宗教だと、教えに反したり、なんなら神様を信じてないだけでバチがあたったりするわけです。救いもしないけど、(神を信じないからといって)罰するわけでもない。なんだかユルいな。

それで気づいたのです。神道って、見返りを求める宗教じゃなくて、単に「敬意を表する」宗教なんですね。
まあ、天の神に雨乞いするのも、交通安全のお守りを買ってくるのも、見返りを求めてると言えば求めてるんですが、雨が降らなかったからと言って、我々の側も信じなくなるわけじゃないでしょ。何も与えられなくても信じている。神道そのものも変わってますけど、私たちの受け止め方も結構変わってますよね。

なんか、やっぱり宗教というより風習なんだよなあ。
風習でありながら、日本人の宗教観のベースになっている。つまり「神はあちこちに居ていいのだ」という神道の考え方がベースになっているから、クリスマスもお盆もやるんじゃないでしょうか、僕ら。面白いなあ。

余談ですが…この本いま現在、わが市の図書館では4人待ちになっています。私はすぐ借りられたのですが、その後どこかで紹介されたのかしらん。

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