『今までの経験は、無駄ではなかった。』
こんなことを自信持って言いたいものです。
しかしそのセリフが言えるって本当に幸せなのか?
そんなことを言えるのは、「無駄かもしれない、出口の見えない長い長い期間を経験したからこそ」なのだろう。このマンガを読んで、そう思いました。
マンガを読んで書評を書きたくなったのは、これが初めてです。
どういう本か
王様ランキングというマンガに、今さらハマっています。愛と勇気と希望。王道なんだけど、とても面白い。教育的意義もあると感じたので、子供と一緒に楽しんでいます。その作者が書いた自伝的マンガということで、裏話とか、バズる秘訣とか書いてあるのかな?なんてミーハーな気持ちで読んでみました。
内容としては「漫画家を目指して挫折し、サラリーマンとして働き、絵本作家を夢見ては諦め、でも一念発起してサラリーマンをやめ...」という、マンガ「王様ランキング」が人気出るまでの紆余曲折です。ただのマンガとして読めば箸休め程度のマンガ、なのですが、それにしては読後になんだか充実感があります。なんと言いますか...やっと陽の目を浴びた作者を応援したくなる気持ち。やっと陽の目を浴びたところなのに、もう自分の経験や教訓を共有して、みんなに貢献しようというお人好し具合に温かくなる気持ち。苦労してやっと単行本化が決まったのに、本当に出して良いかでひとり悩む場面の、シビれるような気持ち。
応援してる側なのに勇気をもらう、って感じです。
歩いた後に道が見える
なぜ勇気をもらえるのか。もう少し考えて分かりました。「今まで無駄にしたと思ってたダメダメな日々は、全て意味があった」という結論になってるからなんです。つまり、いまいちパッとしないこの僕らの日常も、将来の糧になると肯定してくれるんですね。
だからといってなんとなく日常を過ごしてるだけでは、何も起きないですよ。「じっと雌伏の期間はあっても良いけど、チャレンジし続ける限り、いまの足掻きが活きるときが来る」ってことです。
それが分かるだけで結構、頑張れるよねぇ。
スティーブジョブズの有名なスピーチを思い出します。「興味のままにいろいろなことをやってたけど、今になってそれが、つながった線(道)になって見える」ってやつ。あれと共通するものを感じます。
エゴは捨てる。ユニークさは捨てない。
しかし、ただチャレンジし続けるだけではアカンのも、どうやら真実。それもこのマンガには、書かれています。
マンガで言えば、素直に「読者を楽しませる」に振り切ること。
そんなの、当たり前ですね。秘訣などないんです。あるのは王道だけ。
しかし...こういうクリエイティブな方面は特に、王道を行くことこそが難しい。だって独創性が求められるし、何より自らの「表現したい」という気持ちに嘘をつくような気がするから。媚びたり、魂を売ったりするような感覚にもなるでしょう。でも、読者を楽しませることは、魂を売ることじゃないんです。
エゴは捨てる。ユニークさは捨てない。
難しいけど、そういうことなんだろう。世の中が自分に合わせてくれるのを待つのではなく、自分が世の中に合わせていく。それでも媚びることにはならない。だって合わせかたに、自分らしさが出るから。実はここが、このマンガで得られる最も大切なポイント。クリエイティブな仕事じゃなくても、あなたの仕事にも活かせる、大切なこと。変な意地とプライドで、求められていない仕事をしていませんか。
ちょっと自分を見直さなくちゃな。
素直に心を開いて読めば、この750円のマンガ、1500円クラスのビジネス書と同じ価値があります。王様ランキングを買いに行って、脇に並んでるこの本が少し気になってた、あなた。これおすすめですよ。