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税金を通して見ると、歴史がめちゃ面白くなる。脱税の世界史レビュー

源泉徴収。サラリーマンが「確実に」所得税を取られる仕組み。これ、ナチスドイツから始まったって、知ってました?

税金についてそんな豆知識の詰まった、この本を友人に薦めてもらって読みました。面白かった。いままで何となく払っていた税金について、いろいろと考え直すことができます。

どういう本か

タイトルこそ「脱税」となっていますが、税金を軸に国家の盛衰や歴史を見ていく本です。ふつう、モンゴル帝国がなぜ滅亡したか、とかそんなに興味ないよね…。でも「ローマ帝国もモンゴル帝国も、税金が理由で崩壊した」とか聞くと「えっ!?なになに?」とか思っちゃいます。話の展開が非常に面白い。しかも分かりやすい。お金がないから、税金を集めるのにこういう工夫をして、時が経つにつれその工夫がゆがんじゃって...なんて話がならんでいます。あー、そりゃモンゴル帝国も崩壊するわ。なんて納得できる。

歴史を納得して理解するって、なかなかないですよね。普通「こういうことが起きました。」「はぁ、そうですか。」で終わりですから。歴史好き以外にとっては。

何を得たか

この本を読んで得られる最たるもの。それは「国もたいしたことねーな」という視点。政治とか、国とか、普段はあって当然だと思ってる。だけどこの本により、「国だからって特別なわけじゃない。会社と似たようなもんだな」と思えるのです。いつの昔も、どこの国も、「お金がいるけどどうやって儲けようか」って考えてるわけです。そう分かると、妙に身近で理解できるものに感じることができる。財務大臣って、自分でお店をやってる親戚のおじさん、ぐらいの感じ。そりゃ言い過ぎか。

国ならではの大事なこと

ただ、お店の主と国が違うのは、”公平に”お金を取らなきゃいけない ということ。お店なら、定価を決めりゃいいわけですが、国はそれじゃダメ。税金を取るという意味では、庶民からうすく広~く一律に取るのが楽なのですが、それアカンやつです。国が存続していくには、お金持ちからは多く、そうでない方からはそれなりに、税を取るようにしないといけない。そのバランスを崩した国は崩壊していく、ということがこの本でよくわかります。

とはいえ国でも難しいこと

じゃそーゆーふうにすればいいじゃない。お金持ちから沢山税金取るようにルール決めたら済む話でしょ。国なんだからさ。
だがしかし!一筋縄ではいかない。そりゃもう様々な抜け穴を用意する奴がいる。国全体として法人税を低くし、企業の本社を誘致するタックスヘイブン国とか。給与所得として受け取ると税率高いけど、配当として受け取れば税率低いとか。いやー面白いですね。いたちごっこというか、蛇の道は蛇というか。

アイルランドのグループ会社その1→オランダのグループ会社→アイルランドのグループ会社その2 ってお金を流すと、合法的に節税できるとか。そんな面倒なことよく考えるね。他のことに頭使えよ、とか思っちゃいます。

そんな秀才たちのいたちごっこに加え、政治家の「選挙で票を取りたい」という思いが絡みますから、まあ理想通りに事は運ばない。

だけどやれないことじゃない。それでも上手くやってきたのが、歴史上の偉人(名君)たちなわけです。

いろいろ難しい条件はあるだろうけど、課税の本質はそんなに難しくない。ぼくら庶民はせめて、理想的な税制とはどういうものなのか、を理解しておいて、世の中を見ていきたいですね。

脱税する予定のない皆さんにも、おすすめの本です。

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