この本、今さらながら、読みました。
とても良かった。
「嫌われる勇気」という本のタイトルから、事前に内容は想像できた。
他者からなんと思われようが、自分の好きなようにやったら良いじゃん。
他者の目を気にし過ぎじゃ楽しく生きれないよ。
ってなことだろうと。
読んだ結果、要約すると、事前の想像の通りではある。
だけど本の中では、事前に想像したよりも、もっとずっと深く、よく考えられた上で「嫌われる勇気」に到達している。
そこへたどり着くまでの導出過程が、本書の神髄。
そしてアドラー心理学の神髄なのだろう。
その過程を理解できているか否かで、結論の受け取り方が全く変わってしまうから。
冒頭の要約だけ見たのでは、ポジティブなだけの小手先自己啓発本と変わらない。
だけど全く違うのだ。
本の内容
哲学者とふつうの青年の対話という形で、アドラー心理学のキモを解説していく内容。
この世の悩みの全ては対人関係から生まれる。
他者からの期待に応えようとするから、あるいは他者を期待に添わせようとするからしんどいのだ。
だから対人関係から自由になれば、幸せになれる。
ただしそれは「人と関わる事を放棄する」ってことじゃない。
「他者の期待にどう応えるか、自分の期待に他者からどう応えてもらうか」という視点から自由になり、自分の頭で真剣に考え、他者のためになると思う動き方を自分で判断して実践する ということ。
そうすれば、「いま、ここ」に集中し、できうる最大限のことを為すしかないことが分かるだろう。
という話。
また、以下のような指摘が、昨今のネット社会を見透かしているようで非常に面白い。
・承認欲求を持つのは間違い
他者に「承認して欲しい」と望むのではなく、自分が何をできるかが全て
・人は「私のほうが正しい」と確信した瞬間、権力争いに足を踏み入れている
議論している本題よりも、「相手より自分が正しい」つまり彼我の優劣の問題になってしまう
・「自分は他人の役に立っている」という主観が持てればそれでよい
相手に取って本当に役に立っているかどうかは、自分ではコントロールできない
読んでみての雑感
最初はふんふんと思って読んでいるが、読み進めるうちに、青年の立場に立って反論を思いついてしまったり、逆に哲学者の立場になって答が浮かんできたり、するようになる。
つまり、単なるインプットじゃなく、読み進めるのとほぼ同時並行、リアルタイムで、本の内容が自分のものになっていくのを感じる。
普通は、本を読んで、読後に考え、実践してみながら自分のものになっていくのに。
そういう意味では、分かりやすさという意味で、非常に上手に書かれた本。
「チーズはどこへ行った?」がヒットしたあと、雨後の筍のように出てきた、薄っぺらい寓話形式のビジネス本とはわけが違う。
(読む前は、そういうのと一緒だと思って敬遠してた)
ただし心理学の一派に過ぎない、ということは念頭に置いておかねば、とは思う。
本書を読んでいると、まるでこれが長年求めていた唯一の正解のように思えてくるからこそ、これが必ず正しいとは限らない、という視点を持ちつつ、活かしたい。
最も印象的なのは、本の終盤で繰り返される、「いま、ここ」にスポットライトを当てる、という話。
過去と現在は、完全なる因果関係があるわけでもないし、同じ理屈で、今を我慢したから未来が良くなる、わけでもない。
いまここでできる最大限の事をする。それを続ける。
2009年に解散してしまった、oasisの3rdアルバム「be here now」が強烈に思い出された。
そのタイトルやジャケット写真にどんな思いが込められていたか、当時の雑誌記事やライナーノーツにいろいろ書いてあった気がするが、結局、「ビートルズは偉大だったけれど、今リアルタイムでお前らの目の前にいる俺たちを見ろ」ってことなんだと思う。
結局それなんだろう。
今、ここでしっかりと目を見開いて、自分に集中する事。
分かりきってることけど、アドラー心理学を通してそれを認識してみると、いっそう身にしみるんだよね。
しばらく「be here now」をスローガンに行こうと思います。