マネジメント 書評

目標達成が出来ないのは、頑張りの問題じゃない。正しい下準備が足りないからです。「最高の結果を出すKPIマネジメント」レビュー

野球選手って、うらやましいよな。

と社会人になりたての頃、思っていました。
だって、目指すところが明確でしょ。バッターとしてならば、来たボールを打つことを頑張ればいい。
長期的に観れば、打率を上げることを目指せばいい。
それにひきかえ、僕らサラリーマンといったら。何が正解なのかもわからないし、どういう数字を目指せばいいかもわからない。売り上げ目標という数字はあるけれど、それをどうやって達成するかなんて、やり方は毎年でも変わる。

野球選手のほうがサラリーマンより何倍も厳しいし、難しいってことは分かってます。でも、目指す数値のわかりやすさがウラヤマシイ、とずっと思っていたわけです。偏見なので、もちろん異論は認めます。

ところがね、この本を読んでやっとわかりました。野球選手で言う「打率」の設定を、僕がサボっていただけなのです。
僕らサラリーマンだって、ひとつの指標を追いさえすればよい。むしろ、いろんな数値を追ったらアカン。

どういう本か

ひとことで言えば、タイトルの通り。KPI(Key Performance Indicator)によるマネジメントの正しいやり方指南書です。
KPIを設定してそれを指標に業務を進める、なんて、まあ当たり前のことです。
でも、KPIを設定していてもうまくいかないでしょ。それは、なんとなくKPIを決めているから。ちゃんとKPI設定を学んでないからです。

これって、PDCAに似ていますね。PDCAなんて社会人なら誰でも知っているけど、きちんとPDCAの回し方を習うと、けっこう目から鱗です。それに近い感じ。知ってるからって、舐めたらアカン。

で、少しだけさわりを書くと、こうです。

KPIとは、「事業成功」の「鍵」を「数値目標」で表したもの。
(中略)
つまり、「事業成功」が何なのか分かっていないとKPIマネジメントは始まらないのです。

いかがでしょう。自分がやってる事業の成功が何なのか、すぐ答えられます?
あなたがもし、会社の、支店や営業所にいるなら、簡単ですね。本社が指定してくる目標値を達成することです。
しかし例えば新規事業をやってるとなると、難しい。そりゃ黒字化が当面の目標だけど、そのためにユーザー数を目指すのか、売り上げを目指すのか、利益を目指すのか。しっかり定まっているでしょうか。

もう、第一章のここから考えさせられるわけです。こりゃ、KPIマネジメント、しっかり学ばないとな。という気になります。

以下、もう少し説明します。

大事なプロセスを分かっているか

で、事業成功をしっかり定義できたとして、まだまだKPIには行けません。KPIを定めるにあたって大事なことがあります。
次の問いは「自分の事業において、どのプロセスが一番大事か、分かってる?」ということです。

  • 現場がコントロールできるもののうち
  • 事業成功につながる
  • もっとも重要なプロセス

これをCritical Success Factor(SFC)と言い、このプロセスをどれだけ実行できるか を目指すことになります。
営業だったら、受注がゴールなわけですが、受注するかどうかはお客様が決めること。だから現場がコントロールできるものには入りません。例えば1か月あたりの再訪問数だったり、1回の提案で3種類(松竹梅)のプランを提案する率だったり、そういう「自分たちの頑張りで伸びる」プロセスを選ぶことが重要です。
さらに、これをひとつだけ選ぶこと。
そして、それを数値化(指標化)すると初めてKPIとなります。日々それだけを追えばいい、わかりやすい目印ができる。

KPIを定める手順

さて、ここまで理解いただけたら、もう本書を読んだ価値があるわけですが、当然そんなに簡単ではない。こういう手順を踏んでKPIを定めるのですよ、というのがこれです。本書の引用から、少しだけ私の自己解釈を入れています。

  1. KGIの確認
    目標値の指標と水準を定める
  2. ギャップの確認
    目標値と現在値(または自然体で活動した場合の到達点)のギャップ
  3. プロセスの確認
    業務プロセスの棚卸。例えば1件の受注までにどのようなプロセスがあるか。
  4. 絞り込み
    棚卸したプロセスから、最重要プロセスを見極める
  5. 目標設定
    最重要プロセスを数値化し、数値目標を定める。
    どれだけ最重要プロセスを頑張れば、KGIを達成できるか。
  6. 運用性の確認
    KGIとの連動性・整合性はあるか。安定してウォッチできる数値であるか。活動メンバーにわかりやすい数値であるか。

私はこの手順を見て、感心してしまいました。みなさん今まで、こんなにしっかりKPIを設定したことあります?他の指標じゃなくて、なぜこの指標じゃないとダメなのか。上記手順にそって時間をかけて定めたならば、即答できるでしょう。
僕らがダメなのは、ここだったのです。KPIをなんか適当な先行指標で選んで決めてたから、そりゃあんまり有効にならない。ガッチリ考えて詰めたKPIならば、とてもパワフルな目印になるはずなのです。
こりゃ、明日から真似するしかありませんよね。最重要プロセスをひとつに絞り込むだけで、かなり難しいけれど。

そのほか、本書では、KPIを決めた後の手順や、ケース別のKPI定め方、KPIが悪化したときの対策など、具体的に示されており、明日から自分で考え実行できるようになっています。

他に生まれる大きなメリット

正しいKPIを設定すると、目標達成が非常にコントロールしやすくなる。何を頑張ればいいかが明確になる。
それがもっとも良いことなわけですが、KPIを中心に仕事が回り始めれば、みんな、自分で判断できるようになる。これもまた、大きなメリットです。細かく指示しなくても、やること/やらないことがはっきりわかる。ということは、メンバーそれぞれが、自分で考えて判断し、動ける。
理想の組織ですよね。
スピードだって爆上がりです。そうすれば、成績だって当然伸びるでしょう。
ぜひ、実践したいと思います。この本、かなりおすすめ。

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