仕事上でのメンタル、大丈夫ですか。
もう少し言えば、自分のメンタルが危ないサイン、持っていますか。
私の場合、ふだん目覚めるのは朝6時ですが、『朝5時ごろに目が覚めて、目覚めた瞬間から仕事のことが思い浮かぶ』という状態になると、「あ、こりゃそろそろヤバいぞ」とわかります。
そんなバロメーターを自分なりに持っている人は、だいたい、過去に潰れかけたことがあるのではないでしょうか。
潰れかけた、で止まればいいのですが、本当につぶれてしまわないうちに、役に立ちそうな本に出会いました。
どんな本か
紛争地域に行ったり、災害現場に行ったり、普通の社会人よりはるかにストレスのかかる状態に、長期間置かれる自衛隊。そういう現場に行けば勤務環境は過酷だし、悲惨な光景も目にする。そこで活動できる自衛官は鋼の心を持っているのかというと、そうじゃない。コントロール術を身に付けているだけなんです。という話。
本のタイトル通り、「技術」で何とかしようということなのです。強い心を作ろうと言ってるのではない。ここ大事。
したがって、ややこしい理論でもないし、根性論でもない。とにかく、現状を見つめ、解像度を上げてとらえる方法を理解する。
まずは、精神的な疲れの要因を、「ムリ」「ムダ」「ムラ」の3分類でとらえる。
次に、もっとも大きな要因となる「ムリ」について、進行度からおおきく3段階に分けて理解する。各フェーズの典型的な様子も知っておく。
ここがわかると、自分や周りの人がいまどれぐらいヤバいのか、回復にどのような策を打てばいいかがわかる。
それらから「ムリ」「ムダ」「ムラ」が起きる構造へと理解を進め、それを回避する方法を得る。
詳しくは本書を読んでいただくとして、そんな感じです。とてもわかりやすい。
心を鍛える方法じゃなくて、心の取扱説明書とでもいいましょうか。単に「ほぉ、そうなっているのか。じゃあその点気を付けて見るようにしよう」というだけなので、読んでいて気が楽ですし、かつ、使える。
メンタルが強靭な人などいない
で、その説明書を読んだ結果、私が得た結論。
メンタルが強靭な人なんて、いない。
仕事がめちゃ忙しいという状態は、だいたい1年しかもたない。もちろん個人差はあって、2年もつ人もいるし、3年持つ人もいるかもしれません。でも、だいたいそんなもん。誰でもいつかはおかしくなる。だからこそ、労働基準法が、そして残業時間の上限があるのでしょうね。周りの人は2年持ってるのに、自分は1年でもうしんどくなったとしても、それは劣っているとかおかしいということではないのです。世の中の標準なだけ。
逆に言えば、2年もつ人だって、自分は強いと思ったらダメ。ちょっとした度合いの違いでしかない。だからこそ、心の疲れを取る技術を会得して自分を守ることが必要になる。
忙しい時はもちろんですし、仕事がうまくいかないとか、上司と合わないとか、そんな時にも覚えておきたい技術です。
休むことでトータルのパフォーマンスを維持する
具体的な疲れを取る技術は、本書を読んでいただくとして、特に大事だなと思ったのは「計画的に休む」こと。
私も、ここ数年、とても意識しています。
私より残業をする人はいるけれど、そこで申し訳ないと思っても、やらない。
なぜか。ラクしたいわけじゃなくて、そこで私が頑張ると、結果的に迷惑をかけるから、です。
いい年したおっさんの私が、今の2倍残業をしたら、1か月持たない。つまり、1か月後に私の出力はゼロになる。それじゃかえって迷惑になる。ということです。
だから、申し訳ないとは思いつつも、残業はほどほどで切り上げる。もちろん、勤務時間中は頑張って密度高く働きますけどね。私は雑談少なすぎて無愛想かもしれないので、それはそれで問題ないとも言い切れませんが。
それに、「この1週間は正念場」みたいな時はもちろん頑張りますよ。山場に多少無理するのは、普通のことですよね。
ストレス発散が良いとは限らない
もうひとつ、この本で意外だったのは、アクティブなストレス発散が良いとは限らない という指摘。
例えば旅行に出かけたり、体を動かしたり。通常であれば、良いことだと思います。でも、「ストレス解消しなきゃ」と焦ってそういうことをすると、仕事の疲れが週末にも取れず、結果としてさらなるストレスになる可能性もあるとのこと。
これはちょっと見極め難しいですね。でも、まあアクティブレスト(アクティブな休み)を取ってみて、どうも違うなってのは、自分で分かるのではないでしょうか。そしたら、のんびり休みなおせば良いだけです。
「アクティブレストが良いとは限らない」って知っておくだけで、手が打てるというものです。
その他覚えておきたいメモ
他にもいろいろと、覚えておきたい点が書いてありました。
- ムリが進行した状態では、仕事のスピードは1/2,1/3でも疲れは2倍3倍になる
- チンギスハンは、部隊長を選ぶとき「並の体力であること」を重視した
(強すぎるリーダーが自分を基準にしたら部下がついてこれず、隊が破たんする) - 部下の大きなムリはリーダーシップの失敗と心得よ
- ストレスには、10年物、1年物、3か月物がある
(1年物ストレスは瓦解させるにも時間がかかる)
などなど。なんにしても、一度読んでおいて損はない本です。気づきにくい心の疲れから、自分を、あるいは周りの人を守るために。