いやあ、見くびってました。こういう「人気マンガに学ぶ」系のビジネス書って、流行りに乗ってるだけだと思ってた。
今回たまたま読んでみて、めちゃパワフルな内容だったので、共有します。
どういう本か
表面的に言えば、サッカーマンガ「アオアシ」の場面を取り上げながら、ビジネスマンに置き換えたらどういうことなのか。を解説する本です。ただ…それだけだったら、アオアシ好きのビジネスマンが読めばいいじゃない という話ですが、違います。
アオアシはあくまで、わかりやすい味付けと事例。この本、実は
未知の状況や仕事に直面した時、どう考え、どのように取り組んでいけばいいか
を整理した本なのです。読み終わって、あまりに満足感が高いので、考えたんですよ。
これはただのマンガモチーフ本じゃないぞ。なぜこんなに読後感が良いんだ?
よくよく考えた結果、上記太字部分のような結論にたどり着きました。
そういう意味では、ビジネス書をよく読んでいる人にも満足できる内容になっています。
この本で何を得るか
で、ここからが大事なんですけど。未知の事態に対応する方法 という本なんて、いくらでもあるわけですよ。今まで読んだこともあるし。
それでも、この本を読む意味は大いにある。なぜか。
この本は方法の言語化だけではなく、事象の抽象化、構造化が優れているから。なのです。
普通のビジネス書って、筆者の主張があって、それを裏付ける事例がたくさん書いてあって、という形ですよね。主張をわかりやすく、読者が実感するには当たり前の構成です。
でもこの本は、事例だけじゃない。事例を抽象化し、分解し、構造化までしてくれるのです。だから納得度がすごい。
例えば「ものごとを振り返るのが大切」という話の場合。PDCAでいうCですね。こんな風に分けてくれます。
振り返りの作法
- 何が起こったか
- どう考えたか
- 得られた学びは何か
- 次どうするか
そのうえで、主人公がパスカットに成功したシーンを取り上げて、分解・説明してくれます。(私の改変が少し入っています)
振り返りの作法 | 事例 | |
1 | 何が起こったか | 味方選手の位置を把握し、指示を出した |
2 | どう考えたか | 指示によって変わった状況から、次に敵がどこへパスを出すかを読んだ(結果パスカットに成功) |
3 | 得られた学びは何か | 周りを把握し、指示を出すことが大事 |
4 | 次どうするか | (省略) |
具体例を出すだけではなく、分解して、構造化するとなぜこんなに納得度が違うのか。簡単です。「分ければわかりやすくなる」からです。何を取り上げるにしても、分からない時は小分けにする。
小分けにして、小分けにした部分ごとのつながりを知る。ここまで出来ると、ツボを押さえた応用・転用ができるわけです。見よう見マネじゃなくて、知識が本当に自分のものになる。
他の本で読んだことがある内容でも、整理し構造化して見せてくれる。それだけで、この本を読む意味が大いにあります。
構造化って、頭のいい人、かつ一歩引いた目線で観られる人しかできないので、ここに著者 仲山さんを頼る意味があるというわけです。
もちろん、トレーニングを済めば僕ら凡人でも少し出来るようになりますけどね。
というわけで、この本が与えてくれるもののイメージはこんな感じです。
タイトルに込められた意味
さて、大事なことはもう書いてしまったわけですが、あとひとつ書いておきたいことがあります。
この本のタイトルを今一度、見直してみましょう。
アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方
気づきました?育『て』方じゃないんです。育『ち』方なんですよ。
普通こういう本って、育て方って書くでしょう?育て方を教えてあげます、という本にしますよね。
なのに、普通と違って 育ち方 と書いてあるのはなぜか。
著者は「私は、育つ要因・プロセスを、整理して提示するだけですよ」と言ってるんです。知らんけど多分そうです。
ここがまた、感心するところなんですよね。
育て方を教えてあげる。こうしなさい。と言われたら、僕らはとにかく著者の言う通りにするだけで、思考停止になるわけです。
それじゃ考える葦と真逆。考える人の助けをする本なのに、考えない人を産んでしまっては本末転倒。
だから事例は細かく分解して、大事なところが分かるように提示で留める。
あとは読者が自分たちで、自分の周りに応用していく。そこは任せた、というわけです。非常によくできてますね。
なんにしろ、お勧めですこの本。軽く読めるからといって、あなどるなかれ。
余談ですが、この本にとても感心したので、勢いでアオアシ全巻も買ってしまいました。